4-2 分散を考えるときの3軸
銘柄を分けることでリスクを減らす仕組みと、「資産の種類」「業種」「国・地域」の3つの視点から考える本当の分散投資を解説します
4-1 ポートフォリオって何? で資産配分の重要性を見ました。このページでは、リスクを抑えながら安定して資産を増やしていくための大切な道具である 「分散投資」 について整理します。
分散投資というと、「何銘柄持てば安心か」「投資信託を何本買えばよいか」といった数の話になりがちです。しかし、どれほどたくさんの商品を持っていても、同じような値動きをするものばかりでは意味がありません。値下がりのリスクを上手に打ち消し合うための仕組みと、押さえておきたい「3つの視点」を見ていきましょう。
- 投資のリスクには、分散することで減らせる「その会社独自のリスク」と、市場全体が下がって避けられない「市場全体の波」があります。
- 個別の株を買う場合でも、15〜20社ほどに分けることで、会社独自のアクシデントによる影響を大部分抑えられます。
- 本当の分散投資は「数」ではなく、「資産の種類(株や債券)」「業界(業種)」「国や地域」の3つがしっかり分かれているかで決まります。
- 投資信託を何本も持っていても、中身の国や銘柄が同じであれば「見かけだけの分散」になってしまい、リスクを減らす効果はありません。
1. 銘柄を分けると、なぜリスクが減るのか
株式投資のリスクは、大きく次の2つに分かれます。
- その会社独自のアクシデント(個別リスク): 新商品の失敗、不祥事、工場の事故など、特定の会社だけに起きるトラブルです。
- 市場全体の波(市場リスク): 世界的な金利の引き上げ、景気の後退、戦争など、世の中全体を巻き込む大きな波です。
1社だけの株を持っていると、その会社が倒産したり業績が悪化したりしたときに資産が大打撃を受けます。しかし、たくさんの会社に分けて持っていれば、ある会社の業績が悪くなっても別の会社の好調さが補ってくれるため、会社独自のアクシデントによる影響はどんどん小さくなっていきます。
過去の研究データでは、15〜20社ほどに分けて持てば、会社独自のアクシデントによるリスクの8割〜9割を減らせる ことが分かっています。それ以上に50社、100社と増やしてもリスクを減らす効果はあまり変わらず、かえって管理が大変になってしまいます。
2. 本当の分散を実現する「3つの視点」
銘柄数を20社に増やしたとしても、そのすべてが「米国のIT企業」だった場合、分散の効果はほとんど期待できません。IT業界が不振になれば、すべての株が一緒に暴落してしまうからです。
上手にリスクを減らすためには、次の「3つの視点」で偏りがないかを確認します。
| 視点 | 確認するポイント | 偏ってしまっている例 |
|---|---|---|
| 1. 資産の種類 | 株式、債券、不動産、現金などのバランス | 資産のほぼ100%が株式に偏っており、相場が暴落したときに耐えられない |
| 2. 業界(業種) | IT、金融、医薬品、食品などのバランス | 話題のIT株ばかりに偏っており、金利上昇や業界の不振に弱い |
| 3. 国や地域 | 日本、米国、欧州、新興国などのバランス | 自分の住んでいる日本だけ、あるいは米国だけに偏りすぎている |
値動きの特徴が違うもの(例えば「株式と債券」や「景気に敏感な株と生活必需品の株」)を組み合わせることで、リターンをできるだけ落とさずに、日々の値動きのブレ幅だけを小さくすることができます。
3. 「見かけだけの分散」に注意する
投資信託やETFを使えば、1本で何百社もの株に自動で分散してくれるため、個別株のアクシデントを気にする必要はほとんどありません。
ただし、投資信託を何本も組み合わせるときは 「見かけだけの分散」 に注意が必要です。
例えば、「全世界株式」と「米国のS&P500」の2本を持っている場合、手元には違う商品が2本あっても、全世界株式の中身の約6割はアメリカ株であり、上位の銘柄はほとんど同じです。これは分散しているつもりが、実際には「アメリカの大型IT株ばかりに集中して投資している」状態です。
投資信託を選ぶときは、持っている「本数」ではなく、「資産の種類」「業界」「国や地域」がきちんと分かれているかを確かめましょう。
次節 4-3 ポートフォリオを最適化する では、選んだ資産をどのような考え方に基づいて組み合わせると効率が良いのかを見ていきます。